
貞観政要(第5章 名君の条件)
貞観政要(じょうがんせいよう)
私の一冊が「貞観政要」だ。この本は、古来から帝王学のほとんど唯一の教科書として珍重されてきた。
「世界帝国王朝の基盤を固めた名君太宗と重臣房玄齢・魏徴らが語り合う経営・処世の要諦‼
北条政子が心酔し、家康が愛読し、明治天皇が関心を寄せた指導者のための聖典‼」
帯に書かれたこの言葉にこの本の歴史と重さを感じる。なぜ、いま”帝王学”なのか?
この本のはしがきには、「古をもって鑑とせよ」とあり、❝帝王学を守成(守り)の時代に生きるトップの人間学❞ であるとしている。
残り少ない私の人生において、混沌とする国内外の情勢を睨みながら、歴史に裏打ちされた古代の指導者たちの問答を聴き、自分なりの解を求め、2025年を心身共に豊かで有意義な歳としたい。
「2025年私の読書」第二弾は
「徳義(とくぎ)をもってあい輔(たすく)べし」
貞観4年、房玄齢が奏上した。
「さきほど、兵器庫を点検しましたところ、隋代と比べて格段に不足しております。さっそくにも員数の補充をご指示ください」
太宗が答えた。
「たしかに兵器庫を充実させて外敵に備えるのはゆるがせにできぬことだ。されど、今そちたちに望みたいのは、兵器庫を充実させるよりも、政治に心を注ぎ、人民の生活向上に意を用いてほしいことである。」
「それが、とりもなおさず、私の武器なのだ。隋の煬帝が滅んだのは、武器不足が原因ではあるまい。自ら仁義を捨て去り、人民の怨みをかったからである。われらは、煬帝の失敗を二度とくりかえしてはならぬ。常に徳義をもって私を補佐してほしい」(仁義編)
石破首相が退陣し、自民党では新たな総裁選びが始まった。
5人の候補者が連日メディアに登場し、混沌とした国際情勢や物価高、トランプ政権による関税政策による国民生活の疲弊等々への対応を縷々述べているが、国の在るべき姿の議論が少ない感を受ける。
常に、自分が主役に躍り出たいのは政治家の性でしょうが、天下・国家を治めるにはそれぞれの役割が重要で、今の政治にはリーダーの資質もさることながらそれを補佐するブレーン(房玄齢)の姿が見当たらない。
太宗の言う「兵器庫を充実させるよりも、政治に心を注ぎ、人民の生活向上に意を用いてほしい。」とは、まさに、現代社会の状況で政治が本来あるべき姿である。同時代のリーダーのあるべき姿としての【君臣並耕】の意味する「真の賢者は、人民とともに耕作して食い、朝食・夕食の炊(かし)ぎなど雑用をいとわずして、政治をみる」ことから大きくかけ離れている。
新しいリーダーに期待することは、大局的な国家観と常に国民生活に寄り添った政策・施策実現であり、併せてブレーンの諫言(命がけ)である。